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きりりと冴えわたった彼の真っ黒な瞳が、あたしを覗き込む。
こうして見つめ合うことだって、何度もあった。
……けれどこんな、お腹の底まで見透かすような瞳は、向けられたことがない。
「なあに。アタシが、怖いの」
「す、少し」
「アンタ、アタシのことなんにも知らないのに。よくここまで無防備になれたもんね」
「待って、冴島、どういうこと」
動こうとしたのに、顎をつかまれているから体が自由にならない。
長年、冴島とはいっしょにいたから──彼に逆らう方法など、身につけてこなかった。
だって、冴島は……。
「……かわいらしい顔して。アンタもまだ、そんな少女みたいな顔するんだ」
「さ、え……じま」
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