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……この人、本気で黒豹だったのか。
思った瞬間、あたしの唇は形のいい唇に食らいつかれていた。
薄暗いバーのテーブル席、あたしは壁側。背の高い冴島の影に覆われて、あたしたちを気にする人なんて店内にはいなかった。
てろ、と唇をくすぐってくる冴島の舌がやけに熱い。
細やかな舌づかいに戸惑っているうちにマルガリータの味がしてきて、「飲ませてあげる」の意味がやっとわかった。
「さえ、じまっ、やめ……ッ」
「ふ、小さい口」
低くあざける声に、背中がぞくりとする。
いつも女言葉で話すから、冴島の低音の威力を知らなかった。
こんなふうに異性を思い知らせるとか、卑怯だ。
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