だれかのいちばんになりたい

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  「テリトリーって……」  冴島を黒豹のように思ったなんて、口に出したことはない。  それなのに、まるで野生動物みたいな言いかたをする。 「普通の男にいい加減懲りたら、勝手に俺のところに来るだろうと思ってた。……甘かったよ」 「冴島……あの」 「なんだ」  物腰も表情も、いつもの冴島だ。  ただ口調が変わっただけなのに、どうして急にこんなに冴島が遠くなってしまったように感じるんだろう。 「あたしのこと、好きなの……?」  おずおずと、図々しくも訊いてしまう。  冴島は眉尻を下げた。 「いまのでわからないくらい、バカなの」 「だ、だって……結局あたしは恋のひとつもまともに知らない女ってことで」  ぺち、と額をたたかれる。 .
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