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部屋へと飛び込んできた男はここまで走ってきたのか肩で荒く息をし、略式の礼をして彼の前に跪いた。
「…、…父王様、ご容態の急変にございます!至急王の間へっ!」
「……わかった…ッ」
短く言い王の間へと急ぐ。
通路で屯していた貴族や騎士が頭を下げるのにも構わず勢いよく奥の扉を押し開いた。
父王が横たわるベッドを何人もの魔術師が取り囲んでいたが、王子の到着に輪を崩して後ろに下がる。
「…父様…っ!」
ベッドの前で両膝をつき父の顔を覗き込む。
酷く憔悴し痩せた顔には苦痛からの汗が珠のように浮かんでいた。
うっすらとその瞼が開く。
「……ラース、私の…子」
「はいっ。僕は父様の子、ラステア・ビオス・リ・ルクランダムです…っ」
力なく挙げられた手を両手で握る。
自分より痩せ細った指に涙が溢れ出した。
「あぁ、ラース……お前は王になるには、まだ幼い…。ライジス…」
「…兄様、私はここに」
「お前が、ラースの…後見を、してやれ…頼む…」
「はい、兄様」
後ろに控えた男がしっかりと頷いた。
「…ラース……お前の『眼』が開く、ところが…見たかった…」
「父様…っ!」
「…それ、だけが…心残りだ……」
穏やかな、だがどこか哀しげな顔で王は笑った。
するりと父の手が滑り落ちる。
感情を押し殺し父の額に口付け、滑り落ちた手を胸の上で組ませた。
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