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彼は暫く、そのまま固まった。
瞳を閉じ深呼吸を繰り返す。
「―…今、父王はみまかった。ライジス叔父様以外の者は出て行け」
声が震えないようにゆっくりと呟く。
その言葉に従い、数人の魔術師と従者は部屋を出て行った。
静まり返った部屋に扉の閉まる音が響き、力が抜けたようにその場に崩れ落ちた。
寸でのところでライジスが抱き留める。
「…、…っ…」
肩が震える。
「…ラステア…」
宥めるように背を撫でる。
彼の冷えた低音は耳に心地好い筈なのに、今はそんな事を考える事も出来なかった。
今はただ哀しくて…そしてそれ以上に悔しかった。
『お前の「眼」が開くところが見たかった』
思い出し涙が溢れる。
王位継承者の額に現れる『眼』。
絶大な魔力を有し力を発揮する『眼』は『王』になるには絶対に必要だった。
そしてラステアは、その『眼』を生まれつき持ち合わせていた。
だが、成長すれば開くと思われていた『眼』は開かなかった。
今も沈黙を守り彼の額にある。
思わず額を押さえる。
「…叔父様…なぜ、僕の『眼』は開かないのですか?」
鼻が詰まりくぐもった声が響く。
押さえた額には確かに存在する『眼』。
父王が死んだ事で、今『眼』を持つのは彼只一人となった。
望まずとも『王』の座を継ぐ事になる。
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