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王位を継ぐ事は嫌ではない。
だが、自分の『眼』が開かぬままでは民が『王』とは認めないだろう。
そう思い、深い溜め息を吐く。
思い悩む新しき王をその胸に抱き、ライジスは努めて優しく呟く。
「……王位継承は、何もすぐ行う必要はない。『眼』が開くまで待っても構わない」
「でも…っ、それじゃ後見の…叔父様の負担になります」
「私は構わない」
「僕が嫌なんです…でも、どうやれば『眼』が開くかもわからない…いつになるのかもわからないんです…」
ライジスの優しい言葉に小さく首を振る。
そんな彼の頭に軽く口付け、体を離すと跪いた。
「……ですが、開かずとも『眼』を持つのはあなたお一人。時間がかかるにしても、『王』の器はあなただけなのです」
「…叔父様…」
「ラステア様、私に任せては頂けませんか?」
「任せるって…?」
「その『眼』の事です。…私の予測が正しければ、きっと『眼』は開くでしょう」
珍しく破顔し、ラステアの服の裾に口付ける。
臣下が『王』に絶対の忠誠を表す礼だ。
その行為に小さく戸惑う。
「任せて……頂けますね?」
優しい低音が耳を擽り、逆らえない感情に首を縦に振った。
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