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しかし、この状況ではそれもいつになるのかわからない。
長い順番待ちになるだろう。
妻は夫の看病を親戚に任せ、自分は隣の家の手伝いに出た。
炭住には親戚や同じヤマの仲間が多く住んでいる。
互いに助け合う代わりに、自分もまた、自分の夫の看病だけしているワケにはいかない。
隣の家の主人もまた重傷を負っていた。
長屋には大勢の人々が激しく出入りし、さらには炭鉱会社の社員や役所の役人、新聞記者たちまでがどっと押し寄せ、さながら炭住長屋は野戦病院のような有り様だった。
「ただいま。やっと帰ってきた」
疲れ切った妻が自宅に戻ったのは、日も暮れてすでに深夜になってからだった。
「ただいま」
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