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戸口から家の奥にもう一度声を掛けるが誰の返事もない。
灯りは点いているが看病を頼んだ親戚は帰ったのだろう。
妻は玄関の戸を閉め、履き物を脱いで玄関と部屋を区切る障子を開けた。
だが、その瞬間──
「ひいぃぃ!!」
彼女は声にならない悲鳴を上げて、その場にへなへなと、へたり込んでしまった。
そんな!家を出る時はこんなにひどくなかったのに、どうして──
彼女が眼にしたものは天井の白熱灯に煌々と照らされた、夫の無惨な姿だった。
包帯はすべて剥ぎ取られ、痛々しい火傷の赤黒い皮膚が剥き出しにされている。
仰向けに大の字になっている夫の全身からは、布団を濡らすほどの大量の出血が起こっていた。
「あ、ああ……」
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