ヤコ

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ヤコとは<野狐>と書く。 現在ではほとんど使われなくなったが、福岡県の隣の佐賀県にも同じ言葉がある。 一般的に狐の好物は油揚げが有名である。 だが、もうひとつ狐の大好物がある。 それは傷口を覆う、人間の瘡蓋<かさぶた>であった。 だが、ここで疑問が残る。 男を襲ったのが野狐<ヤコ>だとして、人の出入りの多い民家に人間から警戒もされず、簡単にヤコが侵入できるものだろうか? そしてこの疑問に答えるように、複数の目撃者が出た。 「あの家にお医者さんと看護婦さんが往診に来よんしょったばい」 白衣を着た医者とその医者の黒い往診鞄を持った看護婦の2人が、宵の口にこの家へ入って行くのを確かに見たと、複数の住民が証言したのだ。
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