愛故に。

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 幼き頃より共に白龍に仕える二匹の大蛇、ジンとインは紆余曲折経て恋仲とあいなった。何と、更には性を同じくしながら、ヂューアという子迄いるのだ。其れも色々と順番が違っていたりと、何もかもが異例づくめの事。正に、紆余曲折。  蜜月故か。其の仲は何とも睦まじく、美しい神使が笑みを浮かべ並ぶ様は、絵にも描けぬ程眩しく。  元より、白龍の城に仕える者達からの信頼も厚いジンとイン。其の反応も様々で、うっとりと頬を染め眺める者もいれば、男女別無くどちらかに傾倒していた者達は、涙し歯を食い縛る者と、見守る愛を受け入れた者が二分割。当然、宮殿内の雰囲気は、余程鈍くもなければ気付けぬではないものへ一変。なもので、白龍が少々頭を悩ませる場面もあった。しかし、可愛い使いの幸せそうな姿を見ると、やはり親心が顔を覗かせる模様。仕事へ問題はあるまいしと、苦笑いを浮かべるに留めてしまうのであった。  とは言え。ジンとインも勿論節度は心得ている。互いに愛を語り睦み合う時は、互いの私室か、白龍より賜った遊び場のみ。それ以外は、日々抱える責務へ忠実にある姿等何ひとつ変わり無く。共に過ごしながらも、身を寄せ合う時は限られているのだから。 「――ジン。汝の部屋には、女が絶えぬな」  床(とこ)へ腰掛けたインが、衣を羽織りつつふと溢した言葉。向けられた背に、ジンが思わず身を起こして。 「何だ、いきなり……」  そう。ジンにはいきなりだった。漸く、久方振りに重なった余暇。先程迄、互いの熱に浮かされそうな程抱き合い、激しく愛を確かめ合った後だと言うのにだ。  しかも、何故インが其の様な事を突然言い出したのか、心当たりも無いので余計に怪訝な表情となる。インへ愛を告げた日より、代わる代わる美しい女の絶えなかったジンの床へは、最早インだけであるのだから。  そんなジンの心情を知ってか知らずか、インの感情は又違う方向。
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