愛故に。

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 結果へ安堵と納得をするも、直後に顔が熱くなってしまった。 「そ、そうだったのか……」  此の酷い勘違いに気まずさを覚え、ジンの胸へ赤く染まった顔を埋めて。今暫く、ジンへ顔向けが出来ないと。  其の様へ、微笑むジンが続ける。 「此れより花は散る迄見守ってやる様諭し、受け取ったは良いが……飾る様な柄でも無かろう。で、閉まっておいたというわけだ」  インは、面目無さに言葉が出ない。愛を誓ったばかりと言うのに、ジンを信じてやれなかったという後悔も湧き、自己嫌悪に陥ってしまう程に。とは言え、此れも愛深き故の嫉妬。ジンを奪われるかも知れないという、不安からなのだが。  そんなインの髪を優しく弄びながら、ジンは堪えつつも笑みを溢す。 「納得してくれたか。構わぬ……私の此れ迄の素行も、そう誇れるものではないからな」  其れは、素直なジンの言葉。時を掛けて信用を得るしかないのだと。 「す、済まぬ……」  漸く出た、インから謝罪の言葉。ジンは、インの髪を変わらず優しく撫でてやる。責める様な感情は、微塵も感じられず。 「先日から、ずっと気になっていた。けれど、こうして抱かれると……何も聞けなくなって……」  インは又ジンの胸に顔を埋めるが、ジンには何ともいじらしい言葉。  互いに大体の性質は把握しているが、こうした間柄になって、初めて気が付いた一面も多かった。先ずインは、ヂュイエンの一件も然り、恋をすると本当に一途で、情熱的な様だ。一方のジンはと言うと、此れ程迄に他者を心に思う事等無かった為、感じる全てのものが新鮮で。更に、ジンはインに対し非常に甘くなった。以前迄の付き合いからは想像もつかなかった程にだ。勿論、幼い頃より皮肉屋な一面がありながらも、根は誠実で優しいジン。しかし、己へも他者へも、厳格な傾向があるもので。そんなジンが、インに対して溺れてしまいそうな程に甘い愛を注ぐのだから。
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