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「何を言う。俺の可愛い弟だ、安心出来る奴にしか渡せんからな。約束して貰うぞ」
真剣なリンの眼差しから、甘やかしの自覚は無いようだ。若干、引き気味に苦笑いを浮かべるインではあったが。
「少し、悔しいな……」
笑いをおさめ、呆れた溜め息と共に溢れたのはインの本音。リンが此れへ小首を傾げた。
「何がだ?」
「ジンには、リンがいる。ジンは、何時でもリンが一番だ……」
酷く寂しげな瞳。兄弟を知らぬインは、幼い頃より此の兄弟の姿が羨ましかった。
しかし、今度は、リンの方が呆れた様に息を吐いて。
「よく言う。もう取って変わられたじゃないかよ」
リンは腕を組みながら、突っ込んでやる。確かに、今のジンはインを心より愛している。だが、ジンにとってはリンも特別な事もよく知るからこそ。
「其れでもリンは、ジンの隣に居る気がする……もし私が退く事があっても、リンの位置は変わらないだろう」
インが、複雑思いを吐露した。リンは確かに否定も出来ない意見に少々悩ましげであったが。
「まぁ、俺達は兄弟だからな……其れでもだ」
インの頭へ、軽く掌を置いてやる。
「俺とお前が手を差し出したら、ジンはお前の手を取る。其れが、大きな差だ」
続いたリンの言葉へ、上目にリンを見たイン。ジンとよく似た微笑み浮かぶ顔に、思わず顔の熱が上がる。此れは不意打ちだとと、不自然に視線を外してしまう。
普段特に気にしないのだが、こうしてふとした時に、ジンとリンが面立ちも声も瓜二つな事を思い出すのだ。此の兄弟、性質は全く異なり、持つ雰囲気も所作も違うのだ。が、ジンを意識する今のインにとっては少々酷な事も。曾て、神使として召し上げられ、黒龍の宮殿でリンと初めて対峙した際、其の整った容姿と卒の無い立ち居振舞いは、幼心へも憧れを抱かせたものであった。
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