第三章

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腕には、かなり大きな、しかも いくつもの「切り傷」が刻まれていた。 それは昔の古傷なんてものではない、 真新しい、それはついてから一時間もしていないであろう生々しい傷だった。 止血が施されているようで血が垂れることはなけれど、 ワカッテマスさんが強く握ってしまったせいか血が滲み出てきている。 膜は張っているのでまだましかと思われるが、膜が見えるということは、 すなわち肉が見えているということだ。 乗客のなかにはひぃっと悲鳴をあげるものもいたが、 警部が彼の傷を見て笑うことはできなかったという。 なぜか、なんて言うまでもない。 これはどう見ても…… ( <●><●>)「しかし……        これは『弾痕』ではないですね、どこからどう見ても」 (;´・ω・`)「明らかに、鋭利な刃物できられたような傷だな」 . 81 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/09/02(金) 17:47:15 ID:hZF5R6oIO 二本、三本と線がいっているその傷は限りなく怪しくて、 まさに非日常的なものでこそあるものの、 ワカッテマスさんがそれを責めることはできなかった。 もともと、警部も「弾痕は彼に当たったのだろう」という推理を 誰に言わずともしていたのだから。 ( <●><●>)「……一応、メモしておきますか」 先ほど警部によって指示されていた、 位置取りの記入はとうに済んでいて、 今はそこにデータを書いている。 それを横目で見ながら、 男は依然冷や汗を流し、警部に訴えかけた。 . 82 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/09/02(金) 17:49:15 ID:hZF5R6oIO (;`・ω・´)「……確かに、治癒目的で生のアーボンオレンジを塗った。        あまりおおっぴらに見せられる代物でもない」 (;`・ω・´)「しかし」 (;`・ω・´)「この傷は、発砲事件と全く関係のないものだ」 (´・ω・`)「……」 警部が、はじめて彼に対し口を閉ざした時だった。 (`・ω・´)「だから、このことは忘れ――」 ( <●><●>)「――るわけにはいきません」 (´・ω・`)「…ワカッテマス」 すっかりしょぼくれた(?)警部と バトンタッチしたのか、ワカッテマスさんが彼と対峙した。 どうやら、そう簡単に退くわけにはいかないらしい。 当然男も反論する。
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