透けるグラス、透けないグラス

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 誘ってみるもんだな、と思ったのが二時間前。 それから一時間半後の今、僕――俺はデパート近くの銅像の前に立っている。 冬の寒さはコートの上からでも突き刺していて、早く中に入りたいな、と首をちぢこませてコートのポケットに手を突っ込む。 と、最近買ったジッポが指に当たった。 ここに着く前に喫煙所で吸った煙草が最後の一本で煙草の箱はない。 こうして待っていると口寂しいな、と思った時、彼が来た。 「――何で中で待たないんすか」  スマホを軽く揺らしながら彼は白い息を吐く。 どうやら連絡をくれていたらしいけれど、逆のポケットに突っ込んでいたため気づかなかった。 「こういうところの方がデートの待ち合わせっぽいじゃないですかー」  外用の話し方で僕が言うと彼――結希(ユウキ)君は眼鏡を上げてまた白い息をついた。
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