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暗い廊下に立っている。
木製の床は、季節の割にひんやりしている。吹いてくる風も、どこか季節外れのように寒く、撫でられた肌に鳥肌が立つ。
どこなのだろうか・・・・
歩くごとに床がギィギィと軋み、不気味さが増してくる。どこか懐かしい、見慣れない廊下。
この感じ、どこかで・・・・
「悠ちゃん、こっちへおいで」
懐かしい声が廊下に響き渡り、立ち止まる。どちらから聞こえてきたのだろう。
反響しすぎているせいで、前後どちらから呼んでいるのか、完全に分からない。
「母さん! どこ? どこに居るの?」
気付けば、そう叫んでいた。
しかし、反響するばかり。まともに届いているのかも分からない。
「こっちよ、悠ちゃん」
勢い良く振り返る。今度は自信を持ってこっちから聞こえた、と言い切れる。何故か分からないが、確かに後ろの方から聞こえたのだ。
耳障りな軋みをたてる廊下を、ただひたすらに歩いた。
だが、曲がり角が一切見当たらない。直線的な廊下が闇に伸びるだけ。
その間も「こっちだよ」という声は響いていた。
進むに連れて、少しずつだが声量が大きくなっている。この方向で間違ってはいないようだ。
暫く、ただ歩き続けた。
そして、変化の見られなかった景色に1つの変化が訪れた。
完全に閉ざされていた襖が、1箇所だけ開いており光が伸びていた。
恐る恐る近づくと、反響する呼び声はあの部屋から聞こえているようだ。つまり、そこには
「かあ、さん・・・・?」
呟くとそれ以降一言も話さず、黙々と歩く。
そして、部屋の中を覗くとそこには…
畳に刺さり、直立する武器が7つ。規則正しく並び、その前に見覚えのある後ろ姿を見つけた。
背中の半ばまで伸びた艶のある黒髪。
スラリとのびた四肢は細く、容易く折れてしまいそう。あまりにも華奢だ。
灰色のカーディガンに紺のスキニー。見慣れた母の姿がそこにはあった。
だがその目に光はなく、焦点が合っていないため何を見ているのか、全く分からない。
心配になり、
「母さん! 俺だよ、悠だよ」
と言っても何も変わらず、微かに唇を動かすだけだ。
そして何を言っているのかも分からない。
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