001 火の玉の集い

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肩に手を当て揺するも、ただ揺れるだけで大した反応は見られない。 微かに動く唇から発せられる言葉を聞き取ることはできないが、ブツブツ言っている程度だ。 「おい母さん! 何か言えよ! おい!」 耳元で叫んでも、聞こえてるようには見えない。どうしたものだろう。 すると突然、垂れていた左腕を上げ指を指す。 目の前に刺さる武器の1本。片刃の直刀を。 「な、何で宵桜を指差す? 何かあるのか? この状況を変える何かが!」 当たり前のように返事はなく、その代わりと言っては何だか、声量が上がり断片的だが聞こえ始めた。しかしその声には抑揚がない、平らなものだ。 「怠惰の双剣、傲慢の薙刀、強欲の槍、色欲の銃、嫉妬の戦斧、憤怒のメイス。そして暴食の直刀『宵桜』。神々の神器たる大罪たち」 恐らくは目の前に刺さる武器だろう。七つの大罪の名を持つそれら。 喋らぬ母は、直刀を抜けと俺に言ってるのだろう。 刀の前に歩み、見下すように刀を見る。 大したことはない、ただの刀のように見える。刃の輝きがその鋭利さを物語っているように思われる。 そしてその柄を手で握り、引き抜こうと力を入れる。地をしっかり踏み締め、全身を使って抜こうと踏ん張る。 「ぬ、ぬぅぅぅ。くっそがぁ。何で抜けねぇ・・・・」 呼吸が荒くなり、一旦手を離す。 引き抜こうとするだけなのだが、全力にも関わらずピクリとも動かない。まるでそこに張り付いているかのように。 手がジンジンと熱を帯び痛む。皮膚は赤くなり、マメができそうだ。 「力に任せてはいけない。意識を刀と同期させ、意思を読み引き抜け。でないとそれは抜かれることを頑なに拒む」 背後から、母が投げてくる言葉は意味が不明だ。 意識を同調? 道具である刀に意思なんてあるわけがない。 「ワケが分かんねぇ! なんだよ意識を同調って! こんな刀に意思なんてあるわけねぇだろ!」 吐き捨てるように罵声を浴びせ刀を足蹴にするも、母は表情一つ変えずにそこに立っているだけだった。 「ならば刀に触れ、刀に聞いてみれば良い」 最後にそう言い放つと、それ以降ブツブツと言わなくなり、静寂があたりを支配し始めた。
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