001 火の玉の集い

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懐かしい、夢を見ていた気がする。内容はどんなものだっただろうか。 思い出そうとしても、記憶は既に靄の中。姿は大まかに分かれど、表情までは見えないように。 上体を起こし、時間を確認する。 午後3時を少し過ぎた頃。つまりは3時間ほど眠っていたわけか。 強張った体をほぐすため、軽く運動をする。筋肉各所が程良く伸びる、心地良い感覚だ。 「さて、遅くなったが昼飯にするかな・・・・・・」 そう言うと、肯定するかのように腹の虫がなる。まるでタイミングを見計らっていたかのように。 寝起きの動きにくい体でキッチンへと向かう。 未だに眠気がこびり付いている。一度顔を洗った方が良いだろうか。 そして進路をキッチンから洗面所へ変え、欠伸をしながら歩く。 扉を出ると、なんの変哲もない壁と廊下がある。そして玄関と反対側へと足を進める。 季節の割に家の中は涼しく、廊下はひんやりとしている。2階から流れてくる風も湿気は多いが、まだ涼しいものだ。 この時期からは窓を全開にして空気を動かさなければ、2階が灼熱地獄になりかねない。こうしていても多分2階は汗が垂れるほど暑いだろう。 「この時期、あそこで寝たくはないねぇ・・・・」 そう呟くと、止まりかけた足を再び動かす。 あまりにも腹の虫がうるさいため、仕方なく何か胃へ入れようと今度はキッチンへと向かう。 先程通った廊下を逆走し、リビングに併設されたキッチンへ。 冷蔵庫に何か入っていたはずだ。 冷蔵庫のドアを開けると、肌寒い冷気が這い出てきた。何か、食べる物はあっただろうか。 覗き込み探す。 「ハァ、こう言うときに冷蔵庫がすっからかんだとは・・・・。コンビニにでも買いに行くか・・・・」 部屋着から黒のポロシャツにジーンズに着換え、ローテーブルの上に置かれた二つ折り財布をポケッ トに放り込む。 まだ午後3時過ぎ。外界は暑いことだろう。 怠いが腹を満たすためだ。サッと行ってサッと帰るとしよう。 引き戸を開け玄関へと向かう。 「買い物にはしっかり行かないとなぁ・・・・」 玄関扉を開けると、熱せられた空気がその一言を溶かした。
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