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「響さん。」
「何だ?」
「話があります。」
「…何のだ。」
「美音さんとのことで…。」
「分かった…。」
私は夕食の後、早速響さんを話に誘った。
取り敢えず響さんが断らなくて良かった。
……ちゃんと話さなきゃ…。
これ以上私がチャンスを潰すわけにはいかない。
「椿。」
「はい。」
「場所移動するぞ。」
「別にここでも…。」
「風に当たりたい。」
そう言って響さんは歩き出した。
……あれ…?
少し歩くとあることに気づいた。
「響さん。」
「何だ?」
「外いくんじゃないんですか?」
私はてっきり玄関に向かうと思っていた。
けど違ったようだった。
「…二階のバルコニーでいい。」
「え?」
そのまま響さんは階段を上っていく。
……嫌い…じゃないのかな…?
もしかしたら美音さんが早とちりしてただけたのかもしれない。
……もしかして…もう許してたりするのかな…。
だったらすぐに解決するのに…。
そんなことを考えていると、バルコニーへのドアを響さんが開いて待っててくれた。
「入れ。」
「ありがとうございます。」
そう言ってバルコニーに出ると、心地いい風が肌をくすぐった。
……気持ちいい。
「で、話ってなんだ?」
響さんはドア閉めて、私を見つめた。
「あの…響さんは…。」
「何だ?」
「その……。」
……言わなきゃっ!!
「響さんは美音さんと仲直りしようと思わないんですか?!」
「…は?」
「え?」
響さんは意味がわからないといった表情をしている。
「仲直りって何のことだ?」
「美音さんが…響さんを…海で溺れさせちゃって……まだ許してもらえないって……。」
「は?」
響さんは更に意味がわからないといった表情になった。
……あれ?……もしかして……。
「…響さん…ちょっと聞いていいですか?」
「ああ。」
「美音さんが響さんを溺れさせた時のこと…まだ怒ってます?」
「怒ってるも何も最初からなんとも思ってない。」
……やっぱり…でも……。
「じゃあ何で謝ってた美音さんを無視したんですか?」
「…いつ謝ってたか聞いたか?」
「はい…救出された時にって……。」
私がそう言うと響さんはため息をついて、顔を片手で覆った。
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