海と響さんと美音さんの過去

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「…あのな…。」 「はい…。」 「溺れた直後に話が出来るほど…俺は神経図太くないからな。」 「……。」 「それに当時俺は六歳だぞ。」 「……。」 ……美音さんずっと勘違いしてたの?! しかも六歳って…。 ……何か気づくきっかけなかったのかな…。 ていうか…。 「どうしよう…。」 「どうした?」 響さんが心配そうに私に近づいてきた。 「美音さん…響さんにその時のこと、ずっと許してもらってないって思ってますよ。」 「……。」 「……。」 「…何でだ?」 「無視されたと思っていたことと…急に響さんの性格が変わったって。」 「……。」 響さんはまたため息をついた。 なんて言えばいいのかわからないと言った表情をしている。 「…その時はだな…。」 「はい。」 「ちょうど小学校初めての夏休みの最中で、小学校でできた友達と遊びまくってたんだ。」 「……。」 「そしたら姉貴と遊ぶことがなくなった。でも確かに姉貴、その頃俺を避けてた気がしなくもないな。」 「……。」 ……本当にどうしよう! なんて美音さんに報告すればいいんだろう。 さすがに「勘違いでした」って報告するのは抵抗がある。 ……ちょっとの期間ならまだしも十八年って…。 私の頭の中はショート寸前だった。 響さんも固まってる。 まさか十八年も勘違いされてたなんて全くの予想外だったんだろう。 「…どうしましょう…響さん…。」 「…どうしような…。」 「……。」 「…俺が直接言いに行く。」 「え?」 「その方がいいだろ。」 「……。」 ……美音さん…大丈夫かな…。 「…心配なら一緒に行い。」 「でも……。」 「あくまで俺が話すんだからな。お前は見てろ。」 「…はい。」 「それと…。」 「何ですか?」 「姉貴はお前の姉貴でもあるんだ。」 「? はい。」 「姉貴は俺から見てもいい姉貴だと思ってる。」 「はい。」 「だからさっさとあの自己中心的な嫌な姉のことは忘れろ。」 「っ!」 そう言って響さんは私の手を握った。 そのまま手を引いて、歩いていく。 ……どうして…。 涙が溢れ出そうになる。 ……どうして響さんは…すぐに気づくんだろう…。 響さんの言った言葉はいつも私を安心させる。 ……そっか…もう…気にしなくていいんだ…。 私のお姉さんは美音さんだけ。 そう思ってもいいんだ。
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