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「…それはまぁ…後で聞きますけど……。」
これでもう…。
「響さんと美音さんの仲は戻りそうですか?」
「……。」
「……。」
……あれ…。
まさかダメだったのだろうか。
……もしかして私が原因?!
そんなことを考えていると、美音さんが響さんを見ながら、
「多分…何も変わんないと思う。」
と言った。
……え?…何で?
「だって響は喧嘩してるつもりなかったんだし、対応が変わるわけじゃないからね。」
「変わるとしたら…。」
響さんは私の方を見てから、美音さんを睨みつけた。
「監視を付けることぐらいだ。」
「誰にですか?!」
「姉貴に。」
「何でですか?!」
「もうお前との時間を邪魔されないためにだ。」
「……。」
……はい?
「いつもいつも…。」
響さんはもの凄い形相で床を見ていた。
まるで親の仇を見ているみたいに。
……鬼…。
口に出さないよう取り敢えず口を押さえた。
「寛いでいては邪魔され、出掛けようとしては邪魔され、朝もいないは挙句の果てには海までついてくるわでもううんざりなんだよ。」
「それ今回の件何も関係なくない?」
「ああ、船が見えた時点で決めた。」
……そんな時から…?!
「椿。」
「はい。」
響さんは私をじっと見つめて、じりじりと近づいてくる。
身の危険を感じ、私はドアに向かう。
「もう邪魔されない。」
「そうですね。」
「これからはついてこさせない。」
「はい。」
「だから…。」
……ドアノブ…ドアノブどこ?!
手探りでドアノブを探すもなかなか見つからない。
背を向けたらアウトだ。
じゃあどうするか。
逃げる。
「……。」
「椿。」
……あっ、ドアノブあった。
ガチャッ!!
私はそのまま猛ダッシュで逃走した。
「……。」
「…追っかけないの?」
「…姉貴。」
「何?」
「…そのままでいてくれ。」
「え?」
「椿が好きな姉貴でいて欲しい。」
「っ!」
「頼む。」
「…当たり前でしょ。」
「じゃあもう行く。」
「響。」
「何だ?」
「椿のこと、幸せにするわよ。」
「当たり前だ。」
「ワンッ!!」
「ごめんね、おいてけぼりにして。」
「キューン。」
……結局また戻って来ちゃった。
わたあめがスカートの裾を掴んで引っ張ったため、私は再びバルコニーに来た。
響さんが来るのも時間の問題だろう。
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