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「…良かった。」
「クゥ?」
「フフッ、わたあめは分からないよね。」
「ワフッ。」
……ホントに良かった……。
仲直り…そもそも喧嘩なんかしてなかったけど、響さんと美音さんが無事仲直りできてなんだか私まで嬉しくなってしまった。
……良いなぁ…。
それと同時に、羨ましくてたまらない。
どうして私の姉は美音さんみたいな人じゃなかったんだろう。
どうして響さんと美音さんみたいな兄弟になれなかったんだろう……。
「キューン。」
「わたあめは…家族のこと覚えてる?」
「クゥ。」
「…覚えてないよね…。」
わたあめにも家族がいた。
ちゃんと血の繋がった家族。
産まれてすぐに商品となったわたあめは家族のことなんて全く覚えてない、もしくは知らないかもしれない。
だからだろう、わたあめが商品として売られている時、ずっと寂しそうにしていたのは。
「一人ぼっちは辛いもんね……。」
「誰がだ?」
「っ!」
ドアの方を向くと、いつの間にか響さんが立っていた。
「響さん…。」
響さんはわたあめに近づき、頭を撫でた。
わたあめは嬉しそうに目を細めて、あくびをしながら地面に伏せた。
その姿が可愛くて、私も頭を撫でた。
「…椿。」
「はい…んっ!」
わたあめから響さんの方を向いた瞬間、響さんは私にキスをした。
「んん…んっ…響…さん……。」
しばらくして響さんは私から唇を離した。
その姿があまりに色っぽくて、頭がクラクラする。
犬とはいえわたあめもいたため、なんか恥ずかしい。
「最近全然してないからな。」
「っ!」
響さんは恥ずかしがらずにこういうことを言うから困る。
顔に熱が溜まって仕方がない。
「…響さん。」
「何だ?」
「美音さんは…。」
「姉貴だったら拓磨と真司のところに行った。」
「そうですか…。」
……そういえば…。
「美音さんが私のことを調べさせた人って…一体誰なんでしょう…。」
「ああ、それは多分銀次さんだろう。」
「え?!」
「どうした?」
「銀次さんって、あの銀次さんですか?!」
「喫茶店のな。何だ、姉貴何も言わなかったのか?」
「? 何のことです?」
「銀次さんは昔国の諜報員だったんだ。」
「……。」
……嘘でしょ……。
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