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「悪かったな…。」
「いえ…。」
「……。」
「…響さん。」
「何だ?」
「私はただ…羨ましかっただけです。」
「羨ましい?」
「…私も…美音さんみたいな人がお姉さんだったらって。」
「姉貴は椿の姉でもあるだろ。」
「でもっ!」
確かに美音さんは私のお姉さんだけど…血が繋がってない。
そのせいか美音さんをお姉さんだと思えば思うほどあの姉を思い出してしまう。
「……。」
だんだんと視界がぼやけていく。
一回瞬きをすると、涙が零れた。
「…忘れろって言ったろうが。」
「…忘れられないんです…。」
忘れたくても、忘れられない。
それほどまでにあの姉は私に恐怖を植え付けた。
「…本当は…美音さんだけがお姉さんだって思いたい。」
「……。」
「響さんに姉のことを忘れろって言われた時…とても嬉しかった。」
「……。」
「けど…さっき響さんと美音さんが仲直りしたのを見て、羨ましいって思って…。」
「……。」
「そしたら…ずっと頭から姉のことが離れなくなって…。」
頭の中で…ずっとどうしてという言葉が反響する。
……ああ…今の私もの凄く嫌な人だ……。
「俺は…。」
「……。」
「時々…あの姉…親もそうだが……あいつらが椿の家族で良かったって思う時がある。」
「え…?」
……どうして…。
ボロボロと涙が零れていく。
何だか悲しくて悲しくて仕方なかった。
「そうじゃなかったら…椿に会えなかった。」
「…え?」
「椿は母親に似たんだな。」
「響…さん?」
……それは…あの人のことを言ってるの…?
「美人で…心も美しくて…誰にでも好かれる。」
「?…?」
「けど時にその美しさに嫉妬する奴がいる。」
「…嫉妬…?」
「椿の家族は…椿に嫉妬したんだ…お前はすぐに好かれるから。」
「そんなこと…。」
「あの姉が椿の友達に嘘を吹き込んだろ。」
「……。」
「それは全部、椿が大人に気に入られるために利用してるだけだって言ったんだろ?」
「どうして…。」
……どうしてそんなことまで知ってるの…?
「それはお前に嫉妬したからやったんだ。お前の姉や家族は自分達が上手くいかないことを椿が簡単にやってしまうから、ずっと嫉妬してたんだ。」
「……。」
「俺はあいつらに嫉妬され続け、傷つけられる椿を助けたかったんだ。」
「…え?」
……今…なんて言った?
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