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「話は終わりだ。行くぞ。」
「逃げないでください。」
「……。」
「……。」
「行くぞ。」
……酷い…。
響さんはスタスタと歩いていく。
手を握られているため、私もそのスピードに合わせなければならない。
明らかに歩幅が違うのに。
……いいなぁ…足長いの…。
「ハァ…。」
……響さんといい美音さんといい本当にスタイルいいな…。
そういえば敏一さんも良かった気がする。
この間五十は過ぎてるって言ってたけど、背筋はピンとしてて、響さんと大差ない身長だ。
……遺伝だ…。
きっと敏一さんの両親も凄いスタイルが良くて綺麗な顔立ちの人だったんだろう。
……ん?…そういえば私、響さんのお母さんのこと全然知らない…。
「あの…響さん。」
「もう何も言うことは無い。」
「いえ写真じゃなくて…その、響さんのお母さんって…。」
「……。」
何でだろう。
響さんがもの凄いあからさまに嫌そうな顔してる。
「響さん?」
「…出ていった。」
「え?」
「二年前にどっか行った。」
……これは…聞いてはいけないことを聞いちゃった…?
どうしよう…。
「ワニに会いたいって言って…。」
「…へ?」
「止めたんだ…なのにワニと仲良くなりたいって言って…。」
「出ていったんですか?」
「ああ。」
……凄い…。
さすがに動物好きの私でもワニとは仲良くなろうとは思わない。
私は身近なので充分。
「…仲良くなれるといいですね…。」
「いや、ワニとはもう仲良くなったんだ。」
「え?」
「一年前写真が送られてきた。五匹くらいのワニと一緒に写ってた。」
……凄い…。
さっきから響さんのお母さんに対して凄いとしか思ってない。
「今はサメと仲良くなろうとしてる。」
「サメ?!」
サメってあの?!
判断を誤ると食べられるちゃうあのサメ?!
「生きてるんですかっ?!」
「多分…。」
そう言った響さんは凄いうんざりしたような顔をしていた。
「小さい頃からヘビと関わらせようとしてくるはミツバチの巣からハチミツ取ってこいとか、挙げ句の果てには食べようって言うわでろくな思い出がない。」
「響さんよく生きてましたね。」
「海で溺れたことよりそっちの方がトラウマになった。」
……響さんのお母さん…無事だといいな…。
そう思いながら歩いていくと、玄関で美音さんが待っていた。
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