番外編 ~ 椿 ~

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「どうゆうことだ?」 文には記憶がなくなってしまったことが書かれていた。 でも、そこは大した問題じゃない。 「何で…二日後になくなったの?」 「俺もおかしいって思ったんだよ…亡くなったのは事故当日…なのに記憶をなくしたのは事故から二日後だ。」 「……。」 ……椿…。 「響。」 「…何だ?」 琢磨が真剣な顔をして俺を見つめてきた。 友達と言うより、探偵としての琢磨が俺を見ている。 「ハッキリ言う…この子…椿ちゃんは絶対何かある…。」 「……。」 「俺は一応学生の身だし…あまり深くは探れなかった…。」 「……。」 「けど、調べていてわかったことがあるんだ…。」 「……。」 「椿ちゃん…喋らないんだよ……。」 「……。」 「何してても、喋らないんだ。」 俺はその言葉に衝撃を受けた。 ……喋らない…? それは相当なことがなければ起こるはずがない。 喋らないなんて、普通じゃない。 ……俺は…。 一瞬、迷った。 けど、あの日の椿を思い出すと、一瞬で迷いは消えた。 「金は払う。椿について…調べられる所まで調べてくれ。」 「…あのな。」 「何だ?」 「俺別に金が欲しいわけじゃないだけど…。」 「じゃあ、どうすればいい。」 「無償でやるに決まってんだろ。ダチの惚れた女が傷ついてるかもしれないのに、何もしないってのは嫌だからな。」 「……。」 「僕は何もできないけど…法律に関わるような問題があったら言って。」 「…ああ。」 俺は嬉しさを堪え、なんとか平静を装った。 そして再び書類に目を通す。 情報だけでなく、日常での姿も書かれている。 読み進めていると、普通に気になる点が出てきた。 「…何だこれ…。」 「それは写真あるぞ。」 そう言って琢磨が写真を渡してきた。 書類を再び読むと、そこには " 猫に飾られていた " と書かれていた。 写真を見てみると、昼寝をしているらしい椿に、たくさんの猫が花を乗っけていた。 「…?」 「俺は生で見てたけどめっちゃ凄かったぞ。」 「余程好かれてるんだね。」 「……。」 ……やっぱ猫にもわかるんだな…。 むしろ、猫だからわかるのかもしれない。 椿の性格の良さを。 ……他の動物にも好かれそうだな…。 俺は猫と楽しそうに笑う椿の写真をじっと見つめた。 その姿が可愛らしくて、俺は自然と頬が緩んだ。
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