番外編 ~ 椿 ~

18/22
1257人が本棚に入れています
本棚に追加
/220ページ
「そうだ。どうせならお爺様に挨拶にでも行きましょうかね。お爺様と仲良くなれば椿さんもきっと…。」 何を想像してるのか知らないが、風間は頬を赤らめて笑っている。 正直気色悪い。 「椿さんが私の隣で笑ってくれたら、どんなに幸せか。」 ……あ? 今の風間の発言は完全に俺にとってアウトだ。 ……椿がお前の隣で笑うだと? 「そんなわけないだろ。」 「は?」 風間が驚いた様子で俺を見る。 「お前の隣なんかで椿が笑うわけないだろ。」 「なっ!あなた失礼ですよ!椿さんのことを呼び捨てするなんて!」 「将来結婚する女を呼び捨てして何が悪い。」 「へ?」 「そうなんですか?」 魂が抜けたようになった風間には目もくれず、受付にいた女の人達の大半が俺の元に来た。 「はい。今日松野さんと約束しまして…椿本人には内緒なんですけどね。」 「キャー!てことは椿さん玉の輿ってことですね!」 「まぁ、そうなりますね。」 「椿ちゃんは可愛いからね。」 「それに優しいですしね!」 「逆に椿さんみたいな綺麗な人がそこら辺の人と結婚している方がおかしいですよ!」 受付の人達は嬉しそうに話している。 その姿から、この人達も椿のことを好きなんだと気づいた。 素直に、椿を祝福している。 ……わかる人には…わかるんだな…やっぱり…。 「ちょ、ちょっと待て!」 風間が凄まじい形相で俺を睨みつける。 「け、権力を使ったんだろ!でないとおかしいじゃないか!」 「俺は椿をずっと前から知ってる。今日は言ってしまえば雅邦さんが俺を試すために呼んだもんだ。」 間違ってはない。 だから俺は堂々と風間の前に立ち、言った。 「椿が笑うのは俺の隣だ。」 俺はそう言い残して立ち去った。 後日、たまたま現場にいた知り合いから連絡が来て、風間がその後帰ろうとした椿に声をかけたらしいが、椿に怯えられ受付の人達に睨まれたと聞いた。 他にもその場にいた人達にも睨まれ、風間は慌てて逃げ帰ったらしい。 少しはスッキリしたが、俺的にはまだ足りない。 どうせなら椿に思いっきり嫌いとでも言われたほうが気が済む。 ……あいつは懲りないだろうから、チャンスはありそうだな…。 そう思い、俺は密かに風間が椿に嫌いと言われる計画と、あいつの会社を潰す計画を立てた。 ……絶対許さん。 誰であろうと、椿を俺のもの扱いする奴は許さない。
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!