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雅邦さんに会いに行った後から、度々雅邦さんから情報が送られるようになってきた。
やはり身内だからあっさり写真が撮れるらしく、琢磨よりも写真の量は凄まじかった。
……全部アルバムだな…。
自室でそう思っていると、ドアが勢いよく開き、姉貴が入ってきた。
「響!!椿って誰?!」
……バレたか…。
散々後回しにしていたことが、ついにやらねばならなくなったらしい。
「琢磨と真司が言ってたんだけど結婚するって!」
……何故言った…。
そう思ったが、そのうち言わなければいけないことだった為、あまり怒る気にはならなかった。
「…親父は?」
「書斎。今すぐ響呼んでこいって。」
……覚悟を決めるか…。
ゆっくりと座っていたイスから立ち上がり、部屋の隅にあるタンスの引き出しを開けた。
中には今まで集めた大量の椿に関する情報が入っている。
その中から特に重要な資料を取り出し、親父のいる書斎へと向かった。
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「……。」
「響。お前は私に言うことがあるね。」
「ああ。」
「なら言いなさい。」
親父は机に肘を置き、両手を組んで俺をじっと見つめてくる。
これは親父の癖だ。
気に入らないことがあれば、この仕草をする。
……しかも場所が親父の書斎って最悪だな…。
姉貴はというと、本棚に寄り掛かって腕を組んでいる。
……さて、何から話すか。
俺は親父としっかり目を合わせ、口を開いた。
「ある人と結婚の約束をした。」
「誰だ。」
「松野 雅邦さんだ。」
「何?」
親父が驚いた様子で目を見開いた。
どうやらそこまでは知らなかったらしい。
「雅邦さんの孫…椿との結婚を約束した。」
「どうしてお前が椿さんを知ってるんだ?」
「楓さんの葬式の日、親父に黙って抜け出した時に会った。」
「その時から好きだったのか?」
「そうだ…けど一回諦めた。」
「何故だ。」
「…その時は…まさか椿が楓さんの娘だと思わなかった…だから楓さんが亡くなって悲しんでる父さんに調べてほしいなんて言えなかった。」
「…そうか。」
一瞬だけ親父が悲しそうな表情をした。
けどすぐに真剣な顔になり、また俺をじっと見つめた。
「一度諦めたのに、いつ、もう一度会った?」
「たまたま海でフルートを吹いてる椿を見つけたんだ。高二の時に。」
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