番外編 ~ 椿 ~

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……だから何でそこから見てるんだ…。 椿の考えがわからない。 本当に俺は椿と結婚するんだよなと一瞬疑ってしまったほどだ。 視線を向けると椿は怯えたような顔をする。 だから俺は視線を逸らした。 ……やってけるか心配になってきたな…。 そう思いながら、俺は外を眺めた。 けど、弱気になってる暇はない。 これから椿にはたくさんのことを教えなければならない。 また、与えなければならない。 椿が今まで苦しんだ分、幸せにしなければならない。 ……まずは何するか…。 俺は親父と、今目の前にいるこいつらの話は全く耳に入ってなかった。 結婚したら椿と何をするかを考え、俺は機嫌が良くなっていった。 そしてしばらく経ち、話が終わったようで、俺は込み上げる嬉しさを抑えながら、椿の方を向いた。 俺は目を疑った。 ……何してんだあいつ…。 俺の目に映ったのは立ち上がり、逃げようとする椿。 俺はすぐさま呼び止めた。 「おい……。」 椿は一瞬だけ震え、立ち止まった。 「どこ行く気だ。」 そう言うと、椿が振り返り、俺を見た。 ずっと待っていた。 椿の目に俺が映ることを。 椿が俺の声に反応してくれることを。 俺はじっと椿を見つめた。 逃がさないように、真っ直ぐと。 ……固まってるな…。 椿は手を握り、胸に強く押し付けて、必死に動揺を抑えている。 その姿もまた、美しかった。 写真とは比べ物にならない、まるで人形のような少女がそこにいた。 少しだけ色素の薄い髪。 髪と同じ色の瞳。 整った顔。 そしてその整った顔を強調する桃色の頬と唇。 細く、抜群なスタイル。 柔らかい雰囲気。 全てが堪らなく愛おしい。 ……ああ…大丈夫だ…。 俺は立ち上がり、椿の元へ歩いた。 これからの未来が幸せであることを確信し、俺は椿の目の前に立った。 この世の誰も愛しい椿。 俺は必ずお前を幸せにする。 もう二度と、諦めたりなんかしない。 番外編 ~ 椿 ~ ~ 完 ~
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