海と響さんと美音さんの過去

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「わたあめっ!」 慌ててわたあめに駆け寄って行くと、わたあめがスピードを緩め、トコトコと私に近づいてきた。 「何咥えてんだ?」 響さん達も近づいてくる。 わたあめは嬉しそうにパタパタしっぽを振り、魚?を置いた。 「もう…ダメでしょ。」 わたあめを叱ろうと瞬間、私は悲鳴を上げた。 「キャーー!!」 「?!」 恐怖で響さんに抱きつけば、どうやら響さんも固まっているようだった。 「何なんですかこれ?!」 「知らん…。」 そこにはこの世のものとは思えない顔をした魚がいた。 「あっ、これ見たことある。」 「テレビでやってたな。」 「え?でもこれ深海魚じゃなかった?」 「……。」 「……。」 「……。」 「……。」 「……。」 「「「「何で?!」」」」 「……。」 響さん以外の全員の声が揃う。 もう一回魚に視線を移せば恐ろしい顔と対峙する。 ……何なのこの魚……。 目はよくわからないし口には凄い牙が生えてる。 「「「「「……。」」」」」 一同沈黙。 そして一同全員がわたあめに目を向ける。 わたあめは足で首をかいていた。 「…わたあめ。」 「ワンッ!」 一部始終を見てなかったから何が起こったかはわからない。 ただ今は嬉しそうに魚を捕ってきたわたあめが怖い。 ……うぅ…。 この魚どうなるんだろう。 「椿。」 「え?はい。」 突然美音さんが私の隣に来て足を止めた。 「どうかしましたか?」 「いや~今日は積極的ね。」 「え?」 「……。」 「あっ。」 上を見上げれば響さんがじーっと私を見ていた。 周りを見れば拓磨さんや真司さんも私を見ている。 ……また…やっちゃった……。 そう。 私は忘れていた。 「……。」 「……。」 響さんに抱きついていることを。 「…すみません…。」 抱きついていた腕を解き、響さんから離れようとすると、 「キャッ!」 「……。」 「ひ、響さん。」 無言で響さんに戻された。 「ちょっと二人でイチャイチャするなよ!」 「僕も彼女としたいな~。」 「いつも家じゃこんな感じよ?」 美音さん達三人の会話に急激に恥ずかしさを覚える。 「響さん…離してください……。」 「嫌だ。」 ……うぅ。 正直恥ずかし過ぎて死にそう。 何とか離れられないか考えていると、 「響!せっかく海来たのにそれじゃ椿が楽しめないでしょ!」
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