海と響さんと美音さんの過去

10/39
前へ
/220ページ
次へ
「椿!」 「はい!」 美音さんが勢いよく私の肩を掴んだ。 「あなたは知らなくていいの。だからこの話はこれでおしまい…ね?」 「は、はい!」 美音さんが怖い。 笑顔なのに凄い怖い。 ……どうしよう…。 「ワンッ!」 「あっ。」 ナイスタイミングでわたあめが海から上がってきた。 ……ありがとうわたあめ…。 わたあめは体をブルブル振って、水をまいている。 ……可愛い……。 「あっそう言えば!」 美音さんが私から離れ、響さん達を見た。 「何?」 「どうかしました?」 「……。」 「椿と皆でビーチバレーしよって言ってたんだけど…。」 「ああ。」 「へー。」 美音さんが言い終わると同時に、美音さんも含め、拓磨さんと真司さんが響さんの方を向いた。 「……。」 響さんはずっと黙ったまま。 美音さん達はなんか楽しそう。 ……どういう状況? 一人状況が呑み込まずにいると、 「わっ!」 「っ!」 「アッハッハッ。」 「フフッ。」 「え?え?」 突然拓磨さんと真司が私の隣に立って、二人とも私の肩に手を置いていた。 「いいんだぞ響。見てるだけでも。」 「そうだね。二対二でやるのはどうかな?」 「私は拓磨さんか真司さんとペアになるんですか?」 「「そうそう。」」 「それいいわね!やりましょ!」 「じゃああっち行こうぜ椿ちゃん。」 「え?あ、はい。」 拓磨さんに腕を引かれ真司さんに背中を押される。 美音さんが手招きしてるからそっちに向かおうと思えば、突然拓磨さんが掴んでいる腕と反対の腕を後ろに引かれた。 ……えっと…。 「響さん?」 「お前ら卑怯だぞ。」 「「イエーイ。」」 「え?え?」 響さんは恨めしそうに二人を見ている。 当の本人達はハイタッチをして喜んでいた。 ……結局何だったんだろう? 「やっぱ響は響ね~。」 「美音さん。」 美音さんは響さんに聞こえないよう声を小さくして、私に話しかけてくる。 だから私も小声で質問した。 「響さん…何で急にやる気出したんですか?」 「何でって…大好きな椿が遊びとはいえ他の男とペアになるのが嫌なんでしょ。」 美音さんはやれやれといった表情をしている。 ……響さん…。 顔にだんだんと熱が溜まっていく。 ……誰にもバレませんように…。 恥ずかしい。 でもそれ以上に嬉しくて堪らなかった。
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1263人が本棚に入れています
本棚に追加