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――ギターか……。
胸が高鳴っていた。ギターを弾く自分の姿を想像してみる。悪くない気がした。探していた答えはこれだったのかもしれない、と思った。
「ね、先輩」
「はい」
「わたしが本当にギター始めて、がんばって練習して上手く弾けるようになったら、いつか――」
言いかけたその時、植え込みの向こうからヌッと人影が現れた。
「――ちょっと、シンちゃん」
覗いたのは見覚えのある顔だった。先輩と同じクラスの3年の女子だ。ゆるふわボブがよく似合う美人だが、こちらを見下ろすその表情は険しい。
「何してんの、こんなところで。授業始まってるよ」
「知ってる」
「ダメじゃん、これ以上サボったらやばいよ。ホラ、行こ? 今から戻れば出席にしてくれるってオチアイ先生が言ってるから」
ぐるっとこちらに回り込んできて、先輩の腕を引っ張り上げる。先輩は「うるさいなあ、ミユキはー」と言いながらも大人しく従った。
去り際、“ミユキ”はしっかりこちらににらみを利かせていった。
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