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 取り残されたわたしは立ち上がる気になれず、しばらくそのまま膝を抱えていた。  ……あれが今の彼女か。 「先輩って、女の趣味だけは最悪」  わたしの精一杯の悪態は、誰にも届くことなく消えていった。  当然ながら、先輩はモテる。  ライブの後はいつも出待ちの女の子にたちに囲まれていて、どの人が彼女なのか見分けがつかないほどだ。  そのうちの一人と手を繋ぎ、どこかへ消えてく先輩の後ろ姿を、わたしは何度も見送って来た。  貰ったみかんの皮にズブッと爪を挿し込むと、爽やかな香りがほわりと広がった。丁寧に皮をむき、小さなひと房を口に入れる。 「すっぱい……」  先輩がくれたみかんは本当に美味しくなかった。酸味が強すぎて涙ぐんでしまうくらいに。
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