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「ありがと……」
よく冷えたドクターペッパーの350ml缶を受け取る。プルタブを引くと、少し泡が溢れ出した。ドクペはこのあたりには売っていないから、わざわざ遠くの自販機まで買いに行ってくれたのだろう。
「ありがとね、大輔」
もう一度言うと、大輔は困ったような表情で、口角だけきゅっと上げて見せた。
商店街に人通りはほとんどない。いつも路上ライブに使わせてもらっている店の前で、わたしはヒザを抱えていた。今はギターに手を伸ばす気力もない。
「夢、見てたかも……」
「なんの?」
「たぶん、先輩の」
ドクターペッパーをぐいっと煽ると、炭酸が喉をチクチクと突き刺した。
大人がヤケ酒を煽る気分はこんな感じだろうか。苦いだけのビールを美味しそうに一気飲みするサラリーマンは、ご褒美と言いながらふがいない自分を罰しているのかもしれない。
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