-4-

13/18
前へ
/31ページ
次へ
「ありがと……」  よく冷えたドクターペッパーの350ml缶を受け取る。プルタブを引くと、少し泡が溢れ出した。ドクペはこのあたりには売っていないから、わざわざ遠くの自販機まで買いに行ってくれたのだろう。 「ありがとね、大輔」  もう一度言うと、大輔は困ったような表情で、口角だけきゅっと上げて見せた。  商店街に人通りはほとんどない。いつも路上ライブに使わせてもらっている店の前で、わたしはヒザを抱えていた。今はギターに手を伸ばす気力もない。 「夢、見てたかも……」 「なんの?」 「たぶん、先輩の」  ドクターペッパーをぐいっと煽ると、炭酸が喉をチクチクと突き刺した。  大人がヤケ酒を煽る気分はこんな感じだろうか。苦いだけのビールを美味しそうに一気飲みするサラリーマンは、ご褒美と言いながらふがいない自分を罰しているのかもしれない。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

835人が本棚に入れています
本棚に追加