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「わたし、……自分のことしか考えてなかった」 「……」 「勝手に先輩のこと、神様みたいに思って。勝手にがっかりして、勝手に裏切られた気になって。……先輩のこと、ちゃんと見てなかった。レジで毎日顔を合わせてたんだから、何か気付けたかもしれないのに……」  先輩から目を背け、逃げていたのはわたしの方だったのだ。  惨めな姿を直視したくなくて、無意識のうちに目を合わせないようにしていた。  ――だから、思いもしなかった。  あの大音量のヘッドホンが、音楽を聴くためのものではなかったなんて。  あれは先輩にとって、精一杯の予防線だったのだ。必要以上に店員から話しかけられないための。耳が聞こえないことを、周囲に悟られないための。  そのいじらしさを思うと、たまらない気持ちになった。  ヒザに顎を載せ、重いため息を吐く。大輔は何も言わず、わたしの後ろに背中合わせで座った。
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