-4-

15/18
前へ
/31ページ
次へ
『勝手にいなくなっちゃうなんて、ずるい。理由も教えてくれないまま消えちゃうなんて』  日高さんに放った自分の言葉を思い返すと、両手で顔を覆いたい気持ちになった。  何も知らず、あんなことを口走った自分が腹立たしい。こんなわがままを、先輩本人にぶつけなかったことはせめてもの救いだ。  もっとも、――いくら叫んでも、今の先輩の耳には届かないけれど。 「なんでこうなるかな……」  大輔がぽつりと言った。 「あんなかっけー曲作る人が、よりによって一番大事な聴力を失うとか。デビューして、ファンも増えてきて、これからって時にさ。悲しすぎるよ」  大輔の言葉は、苛立たしさと無力感に満ちていた。  わたしも同じ思いだ。いくら歯噛みしても、先輩にしてあげられることは何もない。それがもどかしくてやりきれない。 「……ちゃんと治るのかな」  わたしの呟きに、大輔は「どうかな」と答えた。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

835人が本棚に入れています
本棚に追加