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彼女は大輔よりずっと背が高く、顔はおそらくわたしの広げた手のひらより小さい。いったい何頭身なんだろう。
「幸村さんのステージ、楽しみにしてる」
他の子たちと比べると表情にも声にもあまり抑揚がないが、よく見ればその頬は微かに上気していて、目も輝いている。本心からそう言ってくれているのが分かり、嬉しくなった。
「こちらこそです。本番はよろしくお願いします」
綾火ちゃんの手を握り、固い握手を交わすと、「あ、わたしも」「わたしもー」とメンバーたちに囲まれてしまった。
突然の握手会に必死で対応しているところに、スタッフらしい若い男性が駆け込んできた。
「伊東さん、ちょっといいですか。簡単に流れを確認したいので、代表で来てもらって」
「はい」
「それと――」
スタッフはわたしの方を見て、
「そちらの前座の方も一緒に」
「……?」
一瞬考えてから、「あ、はい」と返事をする。
――なるほど。そうか。
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