あいのうたは鳴り止まない 後篇

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　前座というのは、メインの出演者が出て来る前に舞台に立ち、客席を温めておく役割を言う。

　今回、イベントを観に来るのはドールズのお客さんがほとんどなわけで。つまり、同じステージに立つとはいえ、わたしは前座という扱いになるのだろう。

　――まあ、そりゃそうだよね。

　自分の置かれた状況を今さら理解したことに苦笑しつつ、後について歩き出す。

　少し進んだ所で、「あの」とせなちゃんがスタッフの背中に声をかけた。

「幸村さんは前座じゃなくて、出演者の一人なので。よろしく」

　ちょっと怒ったように言うので、わたしの方が驚いてしまった。

「あ、すいません。失礼しました」

　スタッフの男性は帽子を取り、恐縮している。逆に申し訳ない気持ちになり、わたしは慌てて「いえ、そんな。気にしないでください」と両手を振って見せた。