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「先輩、授業始まりますよ」
「ん。いってらっしゃい」
「えっ、行かないんですか」
「俺はサボり」
「――」
わたしは周囲を素早く見回した。一瞬だけ迷ったが、すぐに覚悟を決める。
「わたしもお邪魔していいですか」
「俺は別にいいけど。だいじょうぶ? サボると怒られるよ?」
「こういう時のために普段は猫かぶってるから大丈夫です」
わたしが真面目な顔で言うと、先輩が目をぱちくりさせてから、ハハッと笑った。
「コームラさん、意外と悪い子じゃん」
くしゃっとした笑顔に、胸の奥がキュッと音を立てる。
――かわいい……。
この素晴らしき笑顔を写真に収めたかったけれど、だしぬけに写メを撮るわけにもいかないので、わたしは心のシャッターを連打し、必死に網膜へ焼き付けた。
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