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「おいで、こっち」
ひょいひょいと手招きされ、もじもじしながら植え込みに足を踏み入れる。
先輩の隣で体育座りすると、柑橘系の香りがした。
「先輩、香水つけてるんですか？」
「いや？」
「いい匂い」
「ああ、さっきみかん食べたから」
なんとも可愛らしいことを言って、制服のポケットをごそごそとさぐる。
「はい、これ」
ポン、と手渡されたのは、小ぶりなみかんだった。
「あんま甘くなかったからあげる」
「……」
甘くなかったからくれるんだ。
まあ、理由はどうであれ、先輩からの初めてのプレゼントだ。「ありがとうございます」と喜んで受け取った。
先輩の体温で温くなったみかんを、大切に手のひらで包み込む。
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