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「卒業したら、その後はどうするんですか」
「とりあえず東京」
「やっぱり……そうだろうなあと思ってました」
つい声が沈んでしまった。
先輩はもうじき、学校どころか大須の街からもいなくなってしまう。
わたしはまだ1年生だ。先輩がいなくなったあとの残り二年間、自分がどう過ごすのか、想像も出来なかった。
「いいですね。夢があるって」
「ん?」
「わたしも早く、何か見つけないとなあ」
――先輩以外の“好きなもの”を。
校庭の方からボールの弾む音が聞こえてくる。太い歓声が上がり、ホイッスルが響いた。誰かがゴールを決めたようだ。
「ギター、やってみればいいじゃん」
のんびりと言った先輩のその言葉に、トン、と後ろから背中を突かれたような衝撃を受けた。
ゆっくりと顔を巡らせ、先輩の方を見る。
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