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「ロックが好きならさ、自分でも弾いてみたいって思うもんじゃん? 俺はストーンズ聴いた次の日にお年玉貯金ぜんぶ下ろしてギター買いに行ったよ。小学生の時」
「――」
わたしが、ギターを?
「でも、わたし、運動神経ないし」
「運動神経カンケーないよ。ギターに必要なのはね、うーん、なんだろ」
先輩は腕組みして、空を見上げた。口を尖らせ、ずいぶんと長い間考えてから、
「ギター弾いてる自分が世界一カッコいいって思える図々しさ? それがあれば充分」
「……」
一拍おいてから思わず噴き出すと、先輩は不満そうな顔をした。
「真面目に言ったのに」
「す、すみません……」
慌てて口元を押さえる。あまりに先輩らしくて、なんだかほっとして、笑ってしまった。
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