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今日は原稿を渡そうとしない自分に渡す時間のチェックを聞こうとしてる元弥に対して、渡す時間なんて考えてなかった真紀は最初はおどおどしていたが、顔を動かさず目線だけを元弥の表情に向けてみた。すると彼は笑顔で話していたのは見えたが、それは口元だけであった。表面の目元は笑っていたが内面の瞳は憤りで染まっているのが見えた。まるで天井が視えない空が朱くなったように。
真紀は彼に原稿を渡すのを辞めた。だから次に渡す時間なんていうのは考えてすらいない。
けど元弥はそれに気づき癇癪に触れた為時間を聞いたのだ。
そこまで想定していなかった真紀の頭は困惑したが、彼の憤った瞳を見て困惑さがより増した。それでも彼は彼女により深く、静かに言い攻め続けた。
「実はーーッ明々後日からバイトを始めるんだ。今週末でも来週でもいいんだけどこういうのは早い内が良いて言うだろ、だから明日か明後日にするのはどうだ、学校の朝一や放課後のちょうど君に声を懸けられた時間でもいい。50秒で答えてくれ」
元弥は真紀に限らた選択肢と時間を与え、一言も発言さなせいまま早口で喋った。
これは相手に少ない選択数で話を持ち掛け、聞き遅れるように早く喋るのは聞かれた本人が焦り思考を停止させて、与えられた選択をその人の意思とは関係無しに答えさせる。
言葉遣いが長けてる詐欺師やテレビの討論番組なんかに出ている評論家や裏社会にセールスマンがよく使う手腕だ。元弥はこれを使い真紀から原稿を手に入れようとしている。
唯々戸惑う真紀に彼と時間はそんなに優しくない、5秒、10秒、15秒、刻々と時が迫っていく。それでも真紀は一向にどれを選び答えるか悩んでたが。
「もう時間は過ぎた、渡すのは何時にするんだ、早く」
元弥が時間が過ぎたことを告げて答えを求めだした。
求められた真紀は表情をしかめ、鋼鉄のように口を固く閉じ、黙り込み始めた。
沈黙、それが真紀の元弥に対しての答えだ。
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