14人が本棚に入れています
本棚に追加
アキラは俺を迎えに来るために、親父さんから、軽トラを借りてきてくれた。
「向こうの仕事はどうさね。大阪だっけか?」
カセットテープ特有の若干のノイズが乗った一昔前の流行歌。そいつが流れる軽トラの車内、不意に聞かれる。
「ああ、東京な。それくらい、この綺麗な標準語で悟ってくれよ」
アキラの俺の顔を見て「東京って顔じゃねーなぁ」とけらけら笑い、つられるように俺も笑う。東京に行って友人も出来たし、遊びだって覚えたが、こんなつまらないことで笑い合えはしない。
走る軽トラの窓から見える景色は、俺がいた頃とあまり変わっていない。よく親父に買いにこさせられたタバコ屋の角を曲がると、漁師には不釣り合いな木造の日本家屋が観える。俺の記憶が正しければこれがアキラの家である。
最初のコメントを投稿しよう!