月の光に照らされて

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満月まであと何日…… 雪音はベランダから空を見上げる。 もう時間がない…… 雪音は人前で見せたことのない涙を溢した。 15歳の誕生日、満月の夜までに好きな相手と結ばれる。それが人間界にいられる条件…… 月の神子として生まれた雪音は人間界に降り立ち麗と神楽 の子供としていままで育ってきた。 生まれた時からの仕来たり…… 月の国の掟…… 月の国に帰ればもう二度と人間界には戻れない。 決められた相手との結納…… 雪音はぎゅっと胸元を握りしめた。 蒼水…… 雪音は想い人の名を呟く…… それは雪音と共に人間界に降り立った双子の兄の名前だった。 双子と言っても蒼水は神子ではない。 月の神子は稀にしか産まれない。 故に崇められる。 神子は紅い髪に緑の瞳を持ち高い知能と能力を秘めている。 月の国のほとんどの兔が白髪か銀髪で産まれてくる。 普通の兔だ、蒼水もまた真っ白な姿で産まれてきた。 同じ時に産まれた雪音だけが月の国に何先年に一匹の割合で産まれる神子だった。 月の国は雪音の誕生を祝い盛大な宴が開かれた。 月の国の慣わしで15歳までは人間界にて暮らすことになっている。 それは神子である雪音も同じこと、他の兔と違うこと……それは15歳になるまでに好きな相手と結ばれなければならないということ。 それができない場合は大兔の神の決めた相手との婚姻、そして月の国に新たな子を誕生させなければならない。神子が産む子は神子としての石を持って産まれてくる。その石は月の国に平和をもたらせてくれるものとして言い伝えられているのだ。 神子として生まれた宿命……雪音は心に言い聞かせるかのように月を見上げ涙を拭った。
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