【序章】過去の記憶

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_母さんもその事に気付いたのか、私を抱き締める腕に力が入る。 _深く一息を吐いた後、母さんは私を解放すると私に向き直り、頭を優しく撫でる。 「母さんはね、ここでやることがあるの。イリス、あなたならきっとこの森を1人で抜けられるわ」 _その言葉はいつも母さんについて回った私にはあまりにも非情で辛い言葉だった。 _泣きやみかけていた涙が再び溢れてくる。 _そんな私に母さんは優しく微笑みかけてくれた。 「大丈夫。あなたになら出来る。だってあなたはお父さんとお母さんの子よ?_出来ないことなんかないわ」 _強くて優しい頼りになる私の母さん。私の頭を撫でる手はどことなく寂しげな感じがした。 _母さんは自分がつけていた青い花の髪飾りを私の髪に移す。そしてもう1度私を強く抱き締め私の額にキスをした。 「愛しているわ、イリス。さぁ、行って」 _母さんは涙で頬を濡らしながら微笑んだ。 _背中を強く押された私は泣きながら森の中へ走り出した。 _大好きな母さんをたった独り残して。
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