プロローグ・過去より

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名波哲郎が大学の心理学部に進学して二年が過ぎようとしていた。そしてその秋、中学時代の友人が亡くなりその告別式に出席した。 根津卓巳。通称・ネズミー。 その細い目と出っ歯のいやらしい面影のある遺影が目前にあり、哲郎は苦笑いして手を合わせた。 フリーカメラマンになり、あるタレントのスキャンダルの追跡中に事故にあったと聞いているが真相は不明だ。 セレモニーホールの入り口でその頃の同級生に会い、少し話したがさっきからもう一人同級生が同席している事に気付いていた。 その女性は目立たないように最後尾の列で泣いていた。お経が唱えられると、その涙は洪水のように床を濡らし哲郎の足元へ流れ着く。 深見響子。中学の頃は深海魚と呼ばれていた。
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