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彼女はまだ病んでいるのかと哲郎は思った。
暗い海の底で心を閉ざし、水上の空間を異常なまでに嫌っている。
自分が醜く、その姿を世間に晒せば深海魚のように目玉も内臓も破裂すると思っているのだ。
哲郎はその深見響子に久々にコンタクトが取れないか試してみた。
自分の能力は大人に近付く度に衰えていたが、深見響子とは話せそうな気がした。
暗い闇の心を持つ者と哲郎は心の海で話す事が出来た。それはある種のテレパシーであり、哲郎は深層心理的素潜りと言っている。
数分も経たないうちに水は膝まで浸水している。
もちろんこれは哲郎の心理的イメージであり、実際は何も起こってはいない。
ただ黙々と告別式は進んでいた。
そして水が胸まで浸水した頃、彼女の位置がはっきりと視えた。
深見響子はアンコウのように赤い光を海の底で灯していた。
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