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どうやら小さな声でしか喋れないほど気の弱い少女らしい、とようやく悟ったデブオタは「こりゃ話を聞くだけでも手間がかかりそうだな」と首を振ったが、肩をすくめると少女を促して歩き出した。
「お腹に優しい店ならどこでもいいんだけどさ。いやあ、さっきはフィッシュアンドチップスに一服盛られてなぁ。あやうく毒殺されるところだったんだ、参ったぜ」
半ば独り言のように言いながら、デブオタは大きな足取りで悠然と歩いてゆく。
少女は、おどおどしながらそんな彼の前でちょこちょこと歩いた。
(何でこんなことになっちゃったんだろう)
歩きながら彼女は困惑するばかりだった。
少女の名は架橋エメル。
彼女は、クラスメートからは目の敵のようにいじめられ、学校にも行けなくなって、もうずっと公園で誰にも見つからないように過ごしていたのだった。
しかし、誰にも迷惑をかけないように独りで歌っているところもリアンゼルに見つけられ、また苛められて。
それからは彼女の気が済むまで苛められるしかないと、ずっと諦めていたのだった。
ところが今日、見ず知らずの男が目の前で大喧嘩を始め、リアンゼルを追い払って力になると言い出したのだ。
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