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いじけているだけの自分の目の前に、まるで嵐のように現れて。
(何でこんなことに……)
しかし当惑するだけのこの十六歳の少女には、この時まだ知る由もなかった。
突然目の前に現れて勝手に喧嘩を始めた日本人のデブオタ。
彼によって、今までとはまるで違う日々が始まったことを……
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「まずは名前を教えてもらえるかな?」
「エメル……です」
「エメ……なんだって? 悪いけど聞こえない。頼むから声のボリュームを上げてくれ。ハイ、もう一度ッ」
「エメルです。架橋エメル……」
蚊の鳴くような声に首を振ったデブオタはいきなり後ろを向くと「レモンティーとレモネード! 毒薬抜きのフィッシュアンドチップス二人前ッ!」と怒鳴り、向かい側に座っていたエメルと手持ち無沙汰にしていた店員を飛び上がらせた。
「これくらいのボリュームで頼むよ」
「む、無理です……」
エメルがまた涙目になったので、デブオタは慌てて妥協した。
「わかったわかった、泣くんじゃねえってば。じゃあその半分でいいからもう一度」
「架橋エメルです……!」
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