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滑稽だが懸命なその様子からは、母親を亡くした悲しみを心から思いやってくれている誠実さが伝わってくる。傷ついていたエメルの心は、優しくくすぐられた。
ちょうどそんな時に、怒鳴られた件の店員が仏頂面でテーブルにフィッシュアンドチップスの盛られた皿とティーカップをドンと置いて去っていった。
「なんでえ、愛想のない店員だな。まあ、とりあえずお茶をどうぞ」
エメルが頷いてレモンティのカップに口をつけると、デブオタは皿のチップスをガツガツ頬張り、ストローからチュゴーと音を立ててレモネードを啜った。
「ところで、さっきエメルを虐めていた歌の女王気取りは一体何者なんだ?」
「リアンですか? 私のクラスメートです。リアンゼル・コールフィールド」
「ふうん、イギリスの学校も日本とあんまり変わんないな。イジメって奴は世界共通の文化なのかねえ」
デブオタは呆れたように首を傾げ「先生には相談したのかい?」と尋ねるとエメルは小さく首を横に振った。
「先生が言ってもクラスの皆がそんなの知らないって……それっきり」
「へっ、クラス中がゲスの太鼓持ちとご機嫌取りか。腐りきってんな」
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