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それは多少デブオタのホラも混じっていたが、エメルは眼を丸くした。
「でもイギリスでは『ブリテッシュ・アルティメット・シンガー』は特別です。アルティメットって名前がつくくらい凄く権威のあるオーディションなんです。事前選考が通ったら公開審査に出られるんですが、そこからテレビ番組で中継されるんです。視聴率が高いから出場しただけでちょっとした有名人になります」
「へえ、そりゃ凄えや。アイツはそこで落ちたのか」
「勝ち抜きのステージ形式で、優勝したらデビュー出来て、そのまま一流スターに仲間入り出来るんですけど……」
「あんな腐った奴がもう少しで一流スターになれるところだったっていうのか。日本じゃとてもあり得んな」
ブタのようにフゴッと鼻を鳴らしたデブオタだったが、自分の横で「出場出来たって凄いなあ……」と感心しているエメルに気が付き、ちょっと呆れてしまった。
「おい、自分をいじめた奴に感心してる場合かよ」
「す、すいません」
「じゃあアイツはプロの歌手を目指していたから……」
デブオタは「そうか」と、気が付いたように指でこめかみを叩いた。
「だからアイツはわざわざエメルの歌に八つ当たりしに来たのか」
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